原石と原点

2020.06.23 Tuesday
Text by yucana

父が他界して
この夏で11年経つ。

父は私が小さな頃から
よく褒めてくれた。

『食』に関することに対しては
とりわけ褒めてくれた。

保育園の頃
小さなゼリーが入っている
プラスチックの型をキレイに洗って
ご飯を詰めてお花型のおにぎりにしたり

キウイをうすーく切って
重ねて巻いて薔薇にしたり

大したことをしていないことは
本人が1番わかっていたけれど

すごいな
同じものなのに
おいしそうに見えるなぁ

そう言われると
嬉しくてたまらなくて
お料理をするのが
好きになった。

札幌でお店を持つようになり
時折訪ねて来ては
代金の倍以上のお金を置いて
満面の笑みで
『由香の作るご飯が
1番おいしい』
そう言っていつも帰っていった。

振り返ると
いつも父の褒め言葉が
支えとなり原動力だったことに
気付く。

今は父の代わりに
家族が褒めてくれる
『おいしい おいしい』

洞爺のみんなが
友達が
お客様が。

父が原石を磨き続けてくれた
おかげだ。

そして今日もまた
わたしは朝から晩まで
キッチンに立ち続ける。

みんなのおいしいが
聞きたいから
それがわたしのしあわせだから。

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yucana

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